トランス脂肪酸を3年以内に撲滅、危ない食物とその仕組み

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FDA Cuts Trans Fat in Processed Foods_0615

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アメリカで3年以内に全廃するとFDAが通達を出してにわかに話題になったトランス脂肪酸、いったい何がいけないのでしょうか?今回FDAではトランス脂肪酸の人体に与える影響(コレステロールの増加、細胞膜の劣化、ホルモン異常など)についての研究結果を根拠としているようです。

脂肪、脂質、脂肪酸と紛らわしい言葉ですが簡単に言えば、脂肪は生体に含まれる脂分を指し、脂質と脂肪酸は脂肪を生化学に専門用語で表した言葉とでもいうべきかな。脂質を分子レベルで分解した一つの型を脂肪酸というように細かく分解・分類されていく。

生活の中では油っぽいものを食べたらそのどれかがトランス脂肪酸と思うと身近に感じるかも。常温で固形(牛脂など)のものはひとつの目安になるかも。

・トランス脂肪酸は何に含まれるか

牛、羊、牛乳の中に天然に微量のトランス脂肪酸が含まれているけれど、過食しなければそれほど問題にはならない(過食もいけないんだよね…)。問題なのは人工的に作られたもので、常温で液体の植物油などを扱いやすいように科学技術で固体化したもの。こういうものがいろいろな加工食品に含まれている。もともとは第二次大戦中のドイツでバター不足を解消するために植物油脂を処理して作られたマーガリンがその始めだそうです。

トランス脂肪酸はマーガリン、ファストブレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナッツなどの洋菓子や揚げ物などにトランス脂肪酸が含まれています。パンに塗って食べる機会の多いのですが、その違いは脂肪酸の成分です。

  • バター … 飽和脂肪酸(動物性脂肪分)を含む
  • マーガリン … トランス脂肪酸と、不飽和脂肪酸(植物性脂肪分) → ラーマソフト(Jオイルミルズ)
  • ファットスプレッド … 少量のトランス脂肪酸と、不飽和脂肪酸 → ネオソフト(雪印)、コーンソフト(明治)

油脂を作るには植物を絞りますが、夾雑物があると香りが悪いため高温処理で除去するのですが、このときにシス型の脂肪酸がトランス型の脂肪酸へと変化します。したがって、サラダ油などの精製した植物油にも微量のトランス脂肪酸が含まれています。

マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング

パン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物

牛肉や羊肉、牛乳や乳製品

  • トランス脂肪酸とは?

マーガリン等を作るためには常温で液体の油脂を半固体又は固体に変える技術を用いるのですが、これには「水素添加」という加工技術を用います。その時に一定の割合でできるトランス型という分子構造をした脂肪酸をトランス脂肪酸といいます(立体異性体)。人間も含めた生物が体内での生合成をする化学物質はほぼすべてがシス型です。

trans   cis

  • トランス脂肪酸はなぜ悪者か

日本はアメリカなど欧米諸国と違いタンパク源に魚や豆を摂る文化でしたが、食の欧米化に伴い肉食へシフトしつつあるあります。お米の消費量を見ても年々減少傾向にあることからパン食が増えていることがうかがえます。日本の主要死亡原因が胃がんであったことからもトランス脂肪酸が社会問題になることはありませんでした。一方欧米でトランス脂肪酸がやり玉に挙げられ、また日本食はヘルシーであるともてはやされる背景にはトランス脂肪酸に対する意識があることを示しています。既にニューヨークのファーストフード店やレストランではマーガリン等のトランス脂肪酸に対する規制が始まっています。

欧米人を対象にした研究ではトランス脂肪酸を摂取すると血中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)量が増加し、心臓病のリスクを増大させると報告されています。また生体内で生合成される化学物質がすべてシス型であることからもトランス型が混在することで、例えば生体膜の構成やホルモン異常を引き起こすといった影響を与えるという報告もあります。

参考:「すぐにわかるトランス脂肪酸」農水省HP

  • 食用油に適しているものは?

花王の「エコナクッキングオイル」は食用油として初めて特定保健用食品と認められた商品ですが、その後の騒動で自ら認定を返納、商品も自主回収して現在では販売されていません。事の顛末は調査中で、2009年から6年が経過した現在でも未解決です。花王のHPには、現在も製品情報が掲載されており、その有効性を示すデータが掲載されていることからもエコナクッキングオイルの無罪を確信しているのでしょう。国も認定当時は問題ないデータが示されていた。「直ちに健康への影響は認められない」というお決まりのスタンス。

食品安全委員会による見解

厚生労働省による見解

エコナクッキングオイルは何がいけないのでしょうか?
一般的な食用油はトリアシルグリセロールが主成分です。一方、エコナは主成分の8割が体内で脂肪として蓄積されにくいとされるジアシルグリセロールであり、この違いがヘルシーだということで一世を風靡しました。しかし、のちの調査でエコナにグリシドール脂肪酸エステルが高濃度で含まれていることが発覚します。

diacylglycerol(食品安全委員会より)

グリシドール脂肪酸エステルは製造段階で(脱臭の段階)で出来てしまう副産物で発がん性は認められていないものの(発がんプロモーションはある)、その分解物であるグリシドールは国際癌研究機関(IARC)によって「人に対し発がん危険性あり(probably carcinogenic to humans) 」(2A群)と分類されている発がん性物質です。

glycidol2(食品安全委員会より)

(確かに多い・・・)

グリシドール脂肪酸エステルの体内での挙動は明らかではないけれども、仮にグリシドール脂肪酸エステルがすべて分解されグリシドールになったとすると、発がんの可能性がないとされる数値の40倍もの量になりこれは看過できないことからこのような状況となっています。ちなみにトランス脂肪酸についても一般的な食用油より5%ほど多いようです。

前置きは長くなりましたが、合成油は避けた方がいいと言えるでしょう。工業的な製造方法の基礎技術である有機化学において副産物を0にすることは困難です。と言っても天然油にも含まれないとは言えませんが。

個人的なランキングは1位.エゴマ油、2位.オリーブオイル、3位.グレープシード、4位.亜麻仁油、5位.ココナッツオイルです。選択する際はガラス瓶であること、透明すぎるものは栄養価が低いので避けること、さらに国内製造だったり、国産だったりすれば完璧。

1位.エゴマ油

国内工場製造。αリノレン酸(オメガ3脂肪酸)の含有量が60%で農薬の残留も0と良品です。

2位.オリーブオイル

多くの健康油が原材料を輸入する中、種から小豆島産を国内工場で圧搾した純国産品です。

3位.グレープシード

イタリア産ブドウ種を圧搾したクセのないオイル。ビタミンEが豊富です。

4位.亜麻仁油

αリノレン酸(オメガ3脂肪酸)の含有量が52%以上で遺伝子組み換えではないことが特徴です。

5位.ココナッツオイル


ヴァージンオイルなので効果あります。

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