プラスチック製品や化粧品、芳香剤などに含まれるごく一般的な化学物質に、妊娠期間中に高レベルでさらされた女性の子どもは、そうでない子どもよりも知能指数(IQ)が低くなる傾向がみられたとの研究論文が、10日の米オンライン科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に掲載された。
研究によるとフタル酸ジブチル(DnBP)とフタル酸ジイソブチル(DiBP)の痕跡が高かった母親の子どもは、同物質に低レベルさらされた母親の子どもと比べて、IQが平均で6ポイント低かったという。
論文の著者の米コロンビア大学メールマン公衆衛生学部のパム・ファクターリトバック准教授(疫学)は、「米国の妊娠中の女性たちはほぼ毎日、フタル酸エステル類にさらされている。そして女性らの多くは、われわれが子どものIQ低下を確認したレベルと同等のレベルでさらされている」と述べた。
「子どもの玩具へのフタル酸エステル類の使用を禁止する規制は一部存在するものの、脳の発達に最も影響を及ぼしやすい時期と考えられる妊娠中の暴露を抑制する規制はない」という。
今回の研究は、就学後の子どものIQと妊娠中のフタル酸エステル類への暴露との関連性を報告した初めてのものという。
研究はこのようにして行われた。
妊娠第3期(約27週以降)の女性から尿サンプルを取り、4種のフタル酸エステル類(フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジエチル)への暴露レベルを測定し、生まれた子どもが7歳になった時点でIQテストを実施。
結果、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチルへの暴露レベルとIQ低下に関連性がみられ、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジエチルへの暴露レベルとIQ低下には関連性がみられなかった。
フタル酸ジブチルとフタル酸ジイソブチルは、乾燥機用の柔軟剤シートやビニール素材を使った生地、口紅、ヘアスプレー、マニキュア液、一部石けんなどに含まれている。米国で、フタル酸エステル類を含んでいるかどうかを記載している製品は、ほとんどない。