編集委員・市田隆2016年2月6日05時03分
貸金業者に払いすぎた利息(過払い金)の請求業務で最大手の司法書士法人「新宿事務所」
(東京都)が、日本司法書士会連合会(日司連)が2011年に決めた報酬指針から
逸脱し、多めに報酬をとっていたことが分かった。指針に法的拘束力はないが、
日司連は「指針を大きく外れているのは遺憾。司法書士のモラルが問われる」と批判。
新宿事務所は「指針と異なる契約を結ぶことは許される」と反論している。
過払い金の請求事務は司法書士や弁護士に依頼するのが通例だが、10年ごろ、
「不当に高い報酬を得ている」との批判報道が続出。日司連が指針をつくって報酬に上限を設けた。
報酬には①成果にかかわらず受け取るもの②借金を減額させた場合に受け取るもの
③払いすぎた利息を取り戻せたら受け取るものがあり、それぞれに上限を設けた。
ただ、②では適正な利息に計算し直しただけで、借金が減った分を貸金業者が認めた場合は、
報酬を受け取れないこととした。「司法書士が何らの交渉をすることもなく減額されたもの」
とみなしたためだ。
しかし、新宿事務所は②で適正な利息に計算し直しただけの場合も減額分の26・9%に
あたる報酬を受け取っている。
朝日新聞の調べによる貸金業界をほぼ網羅する11社の集計では、新宿事務所の扱いで
この計算により借金が減額した分は、14年4月からの1年半で合計約70億円。
その26・9%にあたる約18億円の報酬を、指針に逸脱して受け取っていた計算になる。
また、新宿事務所は③でも指針の上限(回収額の20~25%)を上回る26・9%の報酬を
受け取っていた。
日司連の櫻井清副会長と今川嘉典理事は朝日新聞の取材に応じ、「『報酬額を適正化することで
依頼者の利益の保護を図るとともに、司法書士に対する国民の信頼を確保する』とした指針の
目的から大きく外れている。依頼者の生活再建を目指すためには、なるべく多い金額を返すべ
きなのに遺憾だ」と述べた。「適正な利息に計算し直しただけの場合、報酬を受け取る根拠は薄い」
との趣旨は会員向けの文書で周知徹底していたという。
新宿事務所は朝日新聞の取材に、26・9%の各報酬の受け取りを「合法的な事実」としたうえ、
「指針は会員の執務を直接拘束する規範ではない。参考にするべきガイドラインではあっても、
契約自由の原則のもと、各司法書士法人が独自の報酬体系を定め、指針とは異なる契約を締結
することも許されると考える」などと文書で回答した。朝日新聞が示した借金の減額分約70億円や
報酬額の約18億円については「算定根拠が不明で、回答は差し控える」としている。(編集委員・市田隆)
http://www.asahi.com/articles/ASJ247G46J24ULZU00Q.html
過払い金請求とは