【羊水検査】出生前診断で障害判明…妊娠中絶は安易なのか?

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人類に課せられた大いなる課題なんだ。出生前診断で子供の障害が『分かるようになってしまった』とも言うべきか。覚悟したうえでの出産は親としての責任を強烈に与えてくれる。
出生前診断、迫られる現実の選択…障害判明、中絶を「安易」とする意見は「当事者でない人の他人事」
~産経ニュース~
「本当は『ほらね、この子は病気じゃなかった』ってみんなに言いたかった」。
平成19年、第2子を妊娠した福岡市の徳永律子さん(42)。
胎児の染色体異常の有無を調べる羊水検査の結果は、陽性だった。高齢出産だったため、医師に検査を勧められたが、いったんは「どんな子供でも産むつもりです」と断った。
しかし、その後の検診で胎児に異常が疑われた。
「障害がある子供を持てば苦労する。今回はあきらめて、早く次の子を」。
周囲から投げかけられた言葉にショックを受けた。検査を受けることにしたのは、
周囲への反論とともに、医師から「病気が事前に分かれば、
治療方針を決められる」という前向きな言葉をもらったからだった。




子供は、18番目の染色体が3本ある18トリソミーだった。重度の発達の遅れを伴い、
無事に生まれてきても6割が1週間程度しか生きられず、1歳までにほとんどが亡くなってしまう。
しばらくは何も手につかない状態が続いたが、ある日はっと気付いた。「この子はいつ亡くなるか分からない。親としてやれることはやろう」19年5月、予定日より早く帝王切開で長女、詩乃(うたの)ちゃんを出産。
脳や心臓に疾患があり、生きるか死ぬかの毎日。それでも詩乃ちゃんは、小さい体で2度も手術に耐えた。

1歳半の時に自宅に戻り、22年6月に亡くなるまで家族で過ごした。
徳永さんは「3年1カ月の短い命だったかもしれないけど、
事前に病気が分かったことで全力を尽くそうという覚悟が持てた」と振り返る。

胎児の染色体異常を調べる方法は、妊婦の腹部に針を刺して取った
羊水による検査が主だったが、羊水検査は300分の1の確率で流産や胎児の死に至るとされ、リスクが大きかった。

56人中53人が選択した「中絶」

昨年4月から臨床研究が始まった新型出生前診断(NIPT)。
妊婦の血液の検査で、高い確率で染色体異常の有無が分かるようになった
だが、NIPTは、簡便さ故に「命の選別につながる」という危惧も指摘されている
 NIPTの臨床研究を行う医師らでつくる「NIPTコンソーシアム」が
昨年11月に示したデータによると、昨年4~9月の半年間でNIPTを
受けた約3500人のうち67人が陽性と判定され、その後羊水検査で診断が確定した56人中53人が中絶を選択していた。
 ショッキングな数字だが、親としての逡巡(しゅんじゅん)もくみ取れる。
中絶を選択した理由は「染色体異常の子供を産み育てる自信がない」「将来に不安がある」などの回答が多かった。
 「子供の病気が分かって出産するのは、相当覚悟がいることだ。
私が担当した妊婦の中で、出産を選んだのは1人だけだった」。同団体代表で
産婦人科医として40年近く妊婦と向き合ってきた山王病院(東京都港区)の北川道弘副院長(66)が語った
 昭和大の関沢明彦教授(49)は「胎児に異常が見つかった女性が安易に
中絶を選んでいると考えるのは、当事者でない人の意見だ。親は当然悩む
産もうと決心しても周囲との関係でできない場合もある」と指摘する
晩産化が進む日本。厚生労働省の人口動態統計によると
女性が35歳以上で出産する割合は、平成12年の11・9%に対し、23年は24・7%に増加した
一方、胎児の染色体異常は、母親の加齢とともに確率が高くなる
晩産化に伴い、出生前診断への需要も高まっている。
 高齢出産には、出産時の母体への影響とともに、子供の将来に対する心配もつきまとう。
出生前に染色体異常が分かった場合、親として「いずれ私が老い、亡くなった後、
子供はどうなるのか」という不安を抱くのは自然の思いだ。
それでも、徳永さんのようにあえて産むことを選択した女性もいる。
「障害がある子供を育てるのが大変じゃないと言えば嘘になる。けれど、それ以上に出会えて幸せでした」
 徳永さんはNIPTのニーズの高まりに理解を示しつつ、こう語った。
「人それぞれ立場や環境は違う。事前に知りたい、不安を払拭したいという気持ちは分かる。
けれど、病気の子であれ、みんな意味のある命じゃないかと思うんです」

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